抄録
自然界における高等植物のRubiscoの比活性(kcat)には有意な変異があり、特に寒冷地由来の植物体において高い傾向が報告されている。さらにCO2とO2のspecificity( τ )は高等植物で最大であり、近年、常緑樹>落葉樹>草本の順に有意な差が認められ、乾燥地や高温地に生育するもので高い傾向が見出された。このように高等植物間においてもRubiscoの性能の変異は大きく、自然界に優れたRubiscoの遺伝子資源が存在することを示唆している。また比活性と τ の間には負の相関があることが報告されており、そのため高性能なRubiscoを見出すには両者を両面から同時に解析する必要がある。本研究ではこの点に着目し、草本、落葉樹、針葉樹、CO2削減対策の有用植物として重要視されるユーカリ属等13種のkcatと、大気条件下でのcarboxylase活性/oxygenase活性比(vc/vo)を調べた。イネとの相対比較で、kcatはタバコ、ギンドロ、ブナ、Eucalyptus maidenii、E. globlusが50~70%高い値を示した。またvc/voにおいてはギンドロ、アオモリトドマツ、ハイマツで15~20%高い値を示すことがわかった。この二つのパラメーターを用いて、各植物種のRubisco酵素タンパク質あたりの大気条件下での正味のcarboxylase活性値 [kcat(1-0.5vo/vc)]を算出、比較したところ多くの樹木がイネよりも優れたRubiscoを有しており、その中でもギンドロは1.7倍の高い値を示すことが明らかとなった。