抄録
イネの膜電位依存性Ca2+チャネル候補遺伝子OsTPC1のレトロトランスポゾンTos17の挿入による機能破壊株では、タンパク質性エリシターTvXによりイネ培養細胞に誘導される過敏感細胞死の誘導やMAPキナーゼの活性化が抑制される(Plant J. 2005 42: 798-)。本研究では、Ostpc1機能破壊株を用いて、TvXエリシター応答性遺伝子のトランスクリプトーム解析を行い、感染防御応答における機能解析を進めた。Ostpc1機能破壊株では、TvXにより発現が誘導される遺伝子群の一部について、発現の顕著な抑制が観察された。OsTPC1依存的にTvXにより急激に発現誘導を受ける遺伝子として、Ca2+制御型プロテインキナーゼOsCIPK14/15を同定した。RNAi法による発現抑制株を作成し解析した結果、TvXにより誘導される細胞死や防御遺伝子の発現誘導の抑制が観察された。Ostpc1機能破壊株やOsCIPK14/15の発現抑制株においてTvX誘導性の発現誘導が抑制されていた遺伝子の中には、ジテルペン型ファイトアレキシンの生合成に関与する遺伝子群が含まれていた。本発表では、モミラクトン類、ファイトカサン類と言ったジテルペン型ファイトアレキシンの生合成の誘導に重点を置いて、タンパク質性エリシターにより誘導される感染防御応答におけるCa2+シグナル伝達系関連因子の機能について議論する。