日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナにおける恒常型および誘導型ERボディの比較解析
*小笠原 希実山田 健志初谷 紀幸西村 いくこ西村 幹夫
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p. 0078

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抄録
ERボディは、シロイヌナズナに存在する小胞体由来の新規オルガネラであり、その機能はまだ不明な点が多い。ERボディは、アブラナ科植物の幼植物体全身の表皮に恒常的に存在する(恒常型ERボディ)が、成熟葉には存在しない。しかし、成熟葉に虫害や傷害を与えると、傷口の周りにERボディが誘導される(誘導型ERボディ)ことから、ERボディが生体防御に関与することが示唆されている。ERボディの機能を明らかにするため、恒常型ERボディと誘導型ERボディの比較解析を試みた。まずERボディの数に着目し、誘導型ERボディが多く誘導される系を探索した。その結果、小胞体を可視化した野生株(GFP-h)の発芽9日目の子葉組織を用いることによって、傷害後66時間でERボディの数が明確に増加した。また、ERボディの誘導を調べるため、共焦点顕微鏡を用い、一定体積あたりのERボディ数を測定する手法を確立した。この手法を用い、GFP-h子葉の片方の葉にのみ傷害を与えたところ、傷害を与えた葉のERボディ数が2倍以上に増加するとともに、傷害を与えていない葉のERボディ数も同様に増加した。GFP-h子葉に傷害を与えた66時間後に定量PCRを行った結果、恒常型ERボディの主内容物であるPYK10の発現量は変わらず、そのホモログであるBGL1の発現量が誘導されていることが判明した。この結果より、恒常型と誘導型ERボディの内容物は異なり、それぞれ異なった機能を果たしていることが示唆された。
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© 2008 日本植物生理学会
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