抄録
ステート遷移は、植物が様々な光環境条件に適応するための機構である。ステート遷移が起きる際、光化学系II(PSII)の周辺集光装置である集光アンテナタンパク質(LHCII)は、可逆的に光化学系I(PSI)周辺へ移動すると考えられている。最近、我々は、ステート2で形成されるPSI-LHCI/II超複合体には、3つのLHCIIが含まれていることを報告した。またシングルパーティクル解析などから、これらのLHCIIのうち、特にCP29は、PSIと他のLHCIIの間のリンカーであることが予想されている。そこで本研究では、ステート遷移におけるCP29の機能を、より直接的に明らかにするため、緑藻クラミドモナスを用いCP29のRNAi株(b4i)を作成した。得られたb4i-8株をステート2誘導条件下に置き、そのチラコイド膜を用いてショ糖密度勾配超遠心解析を行ったところ、PSI-LHCI/II超複合体は観察できなかった。しかし、この他のクロロフィル蛍光解析及び電子伝達解析の結果から、b4-8i株はステート遷移能を持つことが確認された。これらの結果より、CP29はステート2条件下においてPSI-LHCI/II超複合体の安定性へ寄与するが、ステート遷移において必須ではないことが明らかとなった。本大会では、CP29以外のRNAi株の解析も併せて、ステート遷移におけるCP29の重要性について議論する。