抄録
刻々と変化する光環境下では,集光アンテナタンパク質(LHCII)が各光化学系(PSI,PSII)の光吸収断面を調節することにより,安全で効率の良い光合成を可能としている.このような光環境適応機構の一つがステート遷移である.近年,LHCIIがPSIに結合したタンパク質超複合体の精製が報告され,ステート遷移におけるLHCIIの移動,そしてPSIへの結合が証明されつつある.一方,それと同時に起きているはずのLHCIIがPSIIから脱離する過程については未だ詳細は不明である.本研究では,変異体クラミドモナスを用いたニッケル吸着クロマトグラフィーにより,PSII-LHCII超複合体の精製を行い,ステート遷移におけるLHCIIのPSIIからの脱離について解析した.ゲルろ過の結果,1500 kDa, 750 kDa, 480 kDaの3種類のPSII-LHCII超複合体が存在することが示され,LHCIIの脱離によってそれらの割合が変化することがわかった.また,その際のLHCII脱離とリン酸化の関係を詳細に解析した.得られた結果をもとに,ステート遷移におけるLHCII脱離機構のモデルを報告する.