抄録
私たちはヒメツリガネゴケにおいて葉細胞が多能性幹細胞へと分化転換する系を確立し、多能性幹細胞化の分子機構解明を目指し研究を行っている。分化転換過程の理解には全トランスクリプトーム及びクロマチン動態のゲノムワイドな解析が必要だと考えられ、次世代高速シーケンサーを用いたシーケンスベースの解析手法の開発を行っている。本研究ではトランスクリプトーム解析における次世代高速シーケンサーの有用性について検討を行った。そこで、mRNA-3’末端及びsmall RNAの大規模配列決定を454シーケンサーで行った。mRNA-3’末端配列を決定するためには、独自に配列決定法を開発した。この手法では逆転写の際にmRNAのpolyA配列について改変型dTを含むアダプタープライマーにより高効率にトラップし、454シーケンサーで読み取り可能な構造にしたライブラリーを構築し大規模な配列決定を行う。これまでに、mRNA-3’末端配列については5つの組織由来のmRNAサンプルについて延べ193万リード、small RNAについては分化転換葉について56万リードを取得した。mRNA-3’末端配列については、ゲノムへのマッピングを行ったところ3’末端配列を濃縮できていることを確認した。