日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リン酸欠乏条件下におけるチラコイド膜糖脂質の役割
*渡辺 英男粟井 光一郎Benning Christoph西田 生郎
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p. 0147

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抄録
植物やシアノバクテリアなどの酸素発生型光合成を行う生物では、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)やジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG) などの糖脂質含量が高く、チラコイド膜ではおよそ90%を占める。これは、複雑な膜構造を持つチラコイド膜をリン脂質で構築すると、大量のリンが必要となり生存に不利なためであると考えられている。実際、シロイヌナズナやSynechococcus sp. PCC7942では、リン酸欠乏条件下でチラコイド膜の唯一のリン脂質であるホスファチジルグリセロール (PG) が減少し、糖脂質の割合が増加することが知られている。今回我々はシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803のDGDG合成酵素遺伝子 (dgdA) を同定し、リン酸欠乏条件におけるDGDGの機能を、遺伝子破壊株を用いて解析した。その結果、必須栄養素を十分に含む培地では野生株、dgdA破壊株の間に生育の違いは見られなかったが、リン酸欠乏培地ではdgdA破壊株に明らかな生育阻害が見られた。また、野生株、dgdA破壊株ともにリン酸欠乏培地で生育すると、クロロフィル含量が減少し、細胞当たりの脂質含量が4分の1程度に低下することがわかった。自然界ではリン酸の供給が制限されていることから、DGDGはその様な環境でシアノバクテリアが生きていく上で必須であると考えられた。
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© 2008 日本植物生理学会
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