抄録
現在、CO2排出による地球環境問題が深刻になってきており、植物バイオマスの効果的利用技術開発がその解決策の一つとして注目を浴びている。植物バイオマスの中でも種子油は、バイオディーゼル燃料や合成樹脂原料用の有力資源として期待されている。
そこで、本発表では油糧作物として重要なアブラナ科植物のモデル植物であるシロイヌナズナに、CRES-T法に基づくキメラリプレッサー転写因子融合遺伝子を導入することによって、種子油増産に寄与する新規遺伝子を探索した。CRES-T法は、類似の転写因子の活性をドミナントネガティブ型に抑制する効果が知られており、量的形質である種子中の油含量改善にも有効と判断した。
35Sプロモーターと共にCRES-T法によって作製した転写因子融合遺伝子を導入して得られた遺伝子組換えT2種子を、1HパルスNMR分析する事により、非破壊で種子中の油含量を定量した。1HパルスNMRによる定量分析には最低3 mgの種子(約150粒)があれば十分であった。T2種子中の油含量の分布を解析した結果、ねらい通り油含量が増加している形質転換種子が得られた。