抄録
植物バイオマスの中でも種子油は、バイオディーゼル燃料や合成樹脂原料などのバイオマス由来の有力資源として期待されている。一方で、植物種子中の油脂貯蔵のメカニズムは不明な点が多く、油脂生産量の向上に結びついた分子育種の例は少ない。
そこで本研究では種子の油脂含量に関与する遺伝子の探索を目的に、CRES-T法によって作製した約200種類の転写因子-転写抑制ドメイン融合遺伝子を35Sプロモーターの下流に連結し、シロイヌナズナへ遺伝子導入した。各遺伝子10個体のT2種子中を、1H-パルス-NMR分析により油脂含量を定量した。その結果、種子中の油分含量が野生株と比べ約20%増加した遺伝子導入系統が得られ、それらにはAP2/ERFファミリー、MYBファミリーに属する転写因子が含まれていた。種子の貯蔵タンパク質含量や油脂の脂肪酸組成等の生化学的な表現系解析、およびDNAアレイによる網羅的な遺伝子発現解析の結果より、これら転写因子と油脂生産のカスケードについて考察する。