抄録
R3-type のシングルMYBタンパク質(S-MYB)が、根毛およびトリコームの分化制御に関わることが報告されている。しかし、アントシアニン合成に関わるS-MYBについては明らかになっていなかった。そこでアントシアニン生合成に関与するS-MYBを探索するため、転写抑制ドメイン(SRDX)を融合した種々のS-MYBのキメラリプレッサーを発現させた形質転換植物を作製してT2種子の色を観察した結果、35S:AtMYBL2SRDX植物体のT2種子が高頻度で黄褐色に変化した。また、ロゼット葉のアントシアニン量の顕著な減少も認められた。AtMYBL2の過剰発現体においても35S:AtMYBL2SRDX植物体と同様の表現型が見られたことからAtMYBL2は転写抑制因子としてアントシアニン合成を抑制することが判った。一方、AtMYBL2遺伝子破壊株(mybl2)では、TT8およびDFR遺伝子発現が誘導され、ectopicなアントシアニン蓄積が認められた。mybl2表現型は、35S:AtMYBL2により相補されるが、AtMYBL2の転写抑制ドメインを欠損させた35S:AtMYBL2ΔC遺伝子では、寧ろmybl2表現型を増強させる傾向が認められた。これらの結果からAtMYBL2はアントシアニン生合成を負に制御し、且つその機能に転写抑制ドメインは重要であることが示された。