抄録
Phosphatidate phosphatase (PAP) はphosphatidic acid (PA) を脱リン酸化しdiacylglycerol (DAG) を生成する酵素である。DAGはmonogalactosyldiacylglycerol, digalactosyldiacylglycerolといった糖脂質, phosphatidylcholine, phosphatidyl-ethanolamineといったリン脂質、および貯蔵脂質 (triacylglycerol) の生合成の共通の基質となるため、PAPは脂質の代謝において重要な役割を果たしていると考えられてる。
我々は最近、シロイヌナズナにおける膜局在型PAPであるlipid phosphate phosphatases (LPP) について報告した(Nakamura et al. (2007) J Biol Chem, 282: 29013-29021)が、さらにこれらとは異なる新規のPAP (PAH1, PAH2) を単離した。解析の結果、pah1, pah2の単独変異体は表現型を示さなかったが、pah1pah2二重変異体では、野生型に比べてPAの蓄積、脂質組成の変化、葉の形態変化などが認められた。さらに発表では、通常生育条件下とリン酸欠乏条件下での脂質代謝経路におけるPAPの役割について解析した結果を述べる予定である。