抄録
イネ科植物で最もアルカリ耐性であるオオムギでは、ファイトシデロフォアとしてムギネ酸を土壌に分泌することによって、本来不溶性の3価鉄イオンをキレートして可溶化し、特異的なトランスポーター(HvYS1)を介して鉄を取り込んでいる。一方、トウモロコシ(ZmYS1)では鉄のみならず様々な金属ムギネ酸錯体を輸送し、また、ニコチアナミン鉄錯体も輸送する。この特異性の違いを担うアミノ酸配列を解明するために、HvYS1-ZmYS1キメラ体を作成し、輸送活性を比較した。HvYS1とZmYS1のアミノ酸配列を比較すると、N末領域と6番目と7番目の間の膜外ループでは相同性が低いことから、2種のトランスポーターcDNAに共通に存在する制限酵素サイトKpn1, BglIIで切断後、キメラ体を作成した。アフリカツメガエルの卵母細胞に発現させて基質特異性を比較し、6番目と7番目の間の膜外ループが基質特異性に関与していることを突き止めた。また、このループのアミノ酸配列をAGARIAプログラムで計算すると、HvYS1はαヘリックス構造をとることが予想された。そこでHvYS1、ZmYS1についてそれぞれ対応する20アミノ酸を化学合成し、円二色性スペクトルを測定した結果、ZmYS1と異なり、HvYS1ではαヘリックス構造を示していた。以上の結果からこの領域がHvYS1の基質特異性に関与していると推定された。