日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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メリステム活性の制御における葉酸のグルタミン酸鎖長制御の意義
*名川 信吾澤 進一郎福田 裕穂
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p. 0169

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抄録
メリステムにおける幹細胞の維持や、特定の細胞への分化の機構について明らかにするために、茎頂分裂組織 (SAM) や前形成層で発現する遺伝子を複数同定してきた。それらのうち、葉酸のグルタミン酸鎖切断酵素Gamma-Glutamyl Hydorolase 1 (GGH1) は、過剰発現時や発現抑制時に異常な茎頂を作ることが明らかになった。葉酸は、核酸やアミノ酸の合成時において広く補酵素として機能することが知られており、生物の生存に不可欠な因子である。今回は、器官形成時の葉酸グルタミン酸鎖長制御の意義について明らかにするために、シロイヌナズナ胚軸外植片の培養系を用いて、カルスからの不定芽形成過程における GGH1 の発現解析、及びポリグルタミン酸型葉酸及びモノグルタミン酸型葉酸作用の解析を行った。GGH1 の発現は、カルス誘導培地では抑制され、不定芽誘導培地では顕著に亢進した。また、カルスからの不定芽形成において、モノグルタミン酸型葉酸は不定芽形成促進能を持ち、ポリグルタミン酸型葉酸は不定芽形成促進能を持たないことが明らかとなった。これらの結果より、GGH は SAM において未分化状態の維持に必須であるポリグルタミン酸型葉酸のグルタミン酸鎖を切断し、器官の分化を促すモノグルタミン酸型葉酸を生じさせることで器官形成に寄与していると考えられた。
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© 2008 日本植物生理学会
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