抄録
葉の形態形成は先端基部軸,向背軸及び中央側方軸に沿って生じる.葉は葉身及び葉柄で構成されるが,この二者の先端基部軸に沿った分化に関する知見は乏しい.そこで,葉身と葉柄の境界がいかにして決定されるのかを明らかにすることで,先端基部軸に沿った,新たな葉形態形成の制御機構を理解できると考えた.まず,シロイヌナズナの野生株及び細胞周期のG2/M期の細胞を可視化できるCYCB1;2:GUS系統を用いて,葉の発生過程を特に先端基部軸に注目して詳細に観察した.その結果,分裂細胞が葉原基に一様に分布している比較的初期の発生段階で葉身基部にくびれが生じ始め,葉身/葉柄の境界領域が形成されることがわかった.また,葉身における分裂細胞の分布はその基部側に多いことが知られていたが,興味深いことに,葉柄においては先端部に多く分布することが明らかになった.同様の解析を,先端基部軸上の器官分化に異常があると考えられる既知の形質転換体及び変異体として,見かけ上葉柄を形成しないLEP過剰発現体及び,葉柄に異所的な葉身を形成する bop1bop2二重変異体についても進めている.今回見いだした葉身/葉柄の境界領域の発生制御に関わる遺伝子を同定するため,この境界領域で発現を示すエンハンサートラップラインの探索も進めており,それらについての解析結果も併せて報告する.