抄録
AppAはリプレッサータンパク質であるPpsRのDNA結合能を光依存的に阻害することで、光合成遺伝子の発現を調節する紅色細菌の青色光受容体である。AppAのN末端側に存在するBLUF(Blue Light Using FAD)ドメインは、発色団としてフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を一分子もち、青色光センサーとして働く。
BLUFドメインの結晶構造はアシルホスファターゼと相同性があり、かつクリプトクロムやフォトトロピンといった他の青色光受容体は、自己リン酸化が自身の活性制御に関わっていることが知られている。そこで、本研究ではBLUFドメインのリン酸化を介した光シグナル伝達機構を検討した。その結果、BLUFドメインも自己リン酸化活性をもち、自己リン酸化は光強度に依存して起こることが明らかとなった。さらに、アミノ酸に部位特異的変異を導入した変異タンパク質での活性測定を行った結果、そのリン酸化部位がT30であり、R32がリン酸基の固定を補助していると考えられた。また、光サイクル反応に必須なQ63の変異体では自己リン酸化の光依存性が見られなくなったことから、光照射によって起こるQ63周辺の構造変化によって自己リン酸化反応の活性も制御されていることが示唆された。これに加え、AppAはリン酸基の受け渡しによってセンサーキナーゼの活性を調節することが示された。