抄録
花の器官形成におけるABCモデルは,その後の研究によりABCDEモデルへと発展した. Dクラス遺伝子はCクラスのサブファミリーに属し,胚珠で発現するMADSボックス遺伝子である.イネには2つのDクラス遺伝子 (OsMADS13, OsMADS21) が存在するが,詳細な機能は不明である.そこで我々は,イネの花器官形成におけるOsMADS13の機能を明らかにすることを目的に実験を行った.
in situハイブリダイゼーション法による発現パターンの解析では, OsMADS13は胚珠分化予定域で発現を開始し,胚珠分化後は胚珠(珠皮,珠心)および心皮の向軸側で強く発現していた.
OsMADS13をRNAi法によって発現抑制した形質転換イネは,栄養成長期の成長や花器官の外観が野生型と同様であった.しかし,雌ずいの組織学的観察において,珠皮が厚くなり,胚のうが形成されないなど胚珠のみに形態異常が見られた.また,OsMADS13遺伝子内にTos17トランスポゾンが挿入された系統の胚珠は心皮様器官に変換していた.以上よりOsMADS13は正常な胚珠の形成に必須であると考えられた.
OsMADS13を過剰発現させた形質転換イネの解析結果と併せ,雌ずい形成におけるOsMADS13の機能について考察したい.