抄録
イネの花器官形成には多くのMADS-box遺伝子が関与し、シロイヌナズナ等で提唱されているABCDEモデルに概ね一致することが知られているが、未解明な部分も多く残されている。我々は、イネのMADS-box遺伝子の中で機能未知であるクラスGに分類されるOsMADS6とOsMADS17に注目し、その花器官形成における役割を報告してきた。
今回、OsMADS6に変異を持つ新たな突然変異体(fm50)の解析を行った。fm50では、OsMADS6のMADSドメイン内の1塩基置換によるアミノ酸置換が起きており、その表現型は、我々がこれまで解析したアリルやRNAiを使用した組換え体よりもシビアだった。これまでの比較的弱いアリルでは、内穎の変化、鱗被の増加と伸長、雄ずいの減少、雌ずいの増加が主な表現型であったが、fm50ではこれらに加えて穎の異所的な形成や穎花のwhorl構造の混乱、分裂組織の有限性の喪失等が観察された。
また我々は、osmads6の弱いアリルに、RNAiによってOsMADS6とOsMADS17の両方をノックダウンできるコンストラクトを導入して組換え体を得た。この系統ではOsMADS6とOsMADS17の発現が強く抑制されており、その表現型はfm50と類似のものになった。これらの実験から、イネの二つのクラスG MADS-box遺伝子の関係を考察する。