日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

ニコチアナミン合成酵素遺伝子HvNAS1 の過剰発現によるイネ種子中の鉄、亜鉛含有量の増加
*増田 寛志臼田 華奈子小林 高範高橋 美智子中西 啓仁森 敏西澤 直子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0247

詳細
抄録
鉄欠乏と亜鉛欠乏症の人々は、世界中でそれぞれ20億人いると言われ、ヒトにおける微量栄養素欠乏症の中で特に深刻である。そこで、遺伝子組換えの手法により、種子における鉄や亜鉛含有量を高めたイネを創製すれば、鉄欠乏や亜鉛欠乏の改善に大きく貢献すると考えられる。ニコチアナミンは高等植物の体内において鉄や亜鉛とキレートし、種子などのシンク器官への金属栄養の供給において非常に重要な役割を担っていることが知られている。そこで我々は、オオムギのニコチアナミン合成酵素HvNAS1 をイネのActin プロモーター制御下で過剰発現させ、植物体内における鉄、亜鉛の転流効率を高めることにより、種子中の鉄、亜鉛含有量を増加させることを試みた。形質転換イネを作出し解析した結果、T1種子の白米中の鉄、亜鉛含有量は、非形質転換体に比べてそれぞれ3倍以上、2倍以上に増加していた系統が得られた。また、T1植物体における地上部のニコチアナミン含有量は、非形質転換体に比べて 5倍から 20倍に増加していた。形質転換体の根、地上部における鉄、亜鉛含有量に顕著な増加が見られなかった。これらの結果から、種子中の鉄、亜鉛含有量の増加は、土壌からの吸収が強化されたことよりも、体内における転流が促進されたことによる寄与が大きいと考えられる。
著者関連情報
© 2008 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top