抄録
Cd汚染土壌のファイトレメディエーションの実現には、植物がCdに応答する機構を理解することが重要である。演者らは植物のCd応答を分子レベルで解明するために、培地中にCdの濃度勾配を持つCd濃度勾配培地を考案し、これを用いてシロイヌナズナのCd応答変異体を単離し、解析を行ってきた(第47、48回大会)。これまでに得られたさまざまな変異体のうち、今回報告するT-26変異体は、根から吸収したCdを地上部へ輸送できなくなった変異体候補として選抜されてきた。すなわち、この変異体では、Cd濃度勾配培地上では培地中のCdのために根の伸長は阻害されるものの、対照的に地上部は健全に展開するという特徴を示した。そこで、播種後約2週間のT-26変異体に30μMのCd溶液を根から与え、24時間後に地上部を収穫しCd濃度を測定した。その結果、同様の処理を行ったWTの地上部に比べ、T-26変異体では、乾物重あたりで約3分の1程度の濃度にしかCdを蓄積していないことが示された。このことからT-26変異体では、EMSにより誘発された変異のために、Cdを根から地上部へ輸送する経路のどこかに異常が生じていることが強く示唆された。どのような分子機構により、T-26変異体では根から地上部へCdが輸送されにくくなったのかを解明するために、現在、解析を進めている。