抄録
小胞体は,正しい高次構造を形成したタンパク質のみをゴルジ体以降に送り出す,品質管理の機能をもつ.小胞体に蓄積した異常タンパク質は小胞体関連分解(ERAD)とよばれる機構により,サイトゾルでプロテアソーム依存的に分解される.酵母液胞のカルボキシペプチダーゼY(CPY)の変異体CPY*は,酵母における代表的なモデルERAD基質である.本研究では,シロイヌナズナのCPYオルソログAtCPYを元にして,植物細胞におけるERAD基質の開発を行った.AtCPYのC末端にGFPを融合したAtCPY-GFPをシロイヌナズナ培養細胞で発現すると, AtCPY-GFPは液胞まで輸送されることが示された.一方,AtCPY-GFPにCPY*と同様の変異を導入したAtCPY*-GFPは小胞体に局在し,プロテアソーム依存的に分解されることがシクロヘキシミドチェイス実験によって示された.また,その分解はERAD因子であるCDC48の優性欠損変異体の共発現によって抑制された.以上の結果は,AtCPY*-GFPが植物細胞においてERADにより分解されることを示している.現在AtCPY*-GFPを元に膜結合型ERAD基質の開発も行っており,その解析結果についても合わせて報告する.