抄録
地球上における一次生産者として珪藻類は重要な役割を担っているが、最近2種のゲノム解析が終了し、そのデータベースが公開されている。私たちは第47回日本植物生理学会筑波大会にて中心目珪藻Chaetoceros gracilisの光化学系I(系I)複合体の精製法について報告した。しかし系I複合体の収量が少なく、スケールアップが困難であったことから、精製法の再検討を行った。その結果、より簡便な方法で系I複合体を高純度に精製することができたので報告する。また、この精製法はThalassiosira pseudonanaのチラコイド膜に対しても有効であることを確認した。精製したC. gracilisの系I複合体のアンテナサイズは255クロロフィルa/P700であった。この値はHPLCの解析から、2分子のメナキノンあたりで算出したアンテナサイズと一致した。閃光照射による430nm付近での吸収変化測定からこのメナキノンは機能的に結合しており、またC. gracilisから精製したチトクロムc6の高い光還元活性から、系I複合体は完全な電子伝達鎖を持っていることがわかった。現在、この系I複合体からfucoxanthin-chlorophyll-binding protein Iの単離を試みているので、その経過もあわせて報告する予定である。