日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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FTIR法による光合成水分解反応におけるプロトン放出パターンの検出
*鈴木 博行杉浦 美羽野口 巧
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p. 0321

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抄録
光化学系IIで行われる水分解反応は、5つの中間状態 (S0-S4) の光誘起サイクルにより進行し、二分子の水が一分子の酸素と4つのプロトンに分解することが知られている。しかし、各中間状態遷移におけるプロトン放出パターンについては、未だ最終的な結論が得られていない。そこで本研究では、水分解反応におけるプロトン放出パターンをフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて見積もった。YD由来のプロトン放出による干渉を避けるため、好熱性シアノバクテリアThermosynecoccus elongatusのYD-less変異体 (D2-Y160F)の光化学系IIコア複合体を試料として用いた。試料をMes及び重水素化Mes (D13-Mes) の高濃度緩衝液に懸濁し、12回の閃光照射により、FTIR差スペクトルを測定した。得られた閃光誘起差スペクトルには、緩衝剤と蛋白質に由来するシグナルが重なって観測された。緩衝剤の正確な変化量を見積もるため、Mes − D13-Mes二重差スペクトルを計算し、蛋白質のシグナルを除去した。Mesシグナルの強度増大の閃光数依存性は、水分解反応に特徴的な4閃光周期振動を示した。単一のmiss factorを仮定したシュミュレーションの結果、S1→S2、S2→S3、S3→S0、S0→S1遷移でのプロトン放出パターンは、およそ0:1:2:1であることが示された。
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© 2008 日本植物生理学会
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