抄録
マメ科植物に特有の形質を分子レベルで解明するためのモデル植物としてミヤコグサ(Lotus japonicus)が注目を集めている。我々は、共生系のメカニズムやマメ科植物の多様性・有用性を解明するための基盤整備を目的として、ミヤコグサゲノム解析プロジェクトを進めている。
これまでに、2000を超えるゲノムクローンを解析することにより187Mbpのnon-redundantなゲノム配列情報が得られており、併用しているwhole genome shotgun 法で得られた情報と合わせて、ミヤコグサESTの9割をカバーするゲノム配列情報が蓄積されている。これらの配列情報を基に遺伝子予測を行った結果、部分予測を含め31000の遺伝子領域が予測された。これらの予測遺伝子情報を基にしてミヤコグサゲノムの遺伝子構成について検討した結果、ARFファミリーなどの転写因子や、微生物との相互作用に関わる受容体キナーゼファミリーなどで遺伝子数の顕著な増加が認められた。また、他のマメ科植物のゲノム、EST情報との比較により、ミヤコグサで認められた傾向の多くはマメ科植物に共通のものであることが示唆された。
本報告では、ミヤコグサのゲノム構造、遺伝子構成の特徴を紹介するとともに、蓄積されたゲノム配列情報と位置情報を利用して行っているマメ科植物間の比較ゲノム解析の状況についても紹介する。