抄録
膜輸送システムは細胞活動の維持に不可欠である。植物では、膜輸送システムは土壌からの効率的な必須元素の取り込みや、環境の変動に伴う種々のストレスに適応するためのイオン恒常性維持機構において重要なはたらきを担う。植物の膜輸送系についてのゲノムワイドな比較解析を行うために、植物ゲノムに典型的な59のトランスポーターファミリーをコードすると推定される遺伝子群を、シロイヌナズナ(TAIR)、イネ(RAP-DB)、ポプラ(JGI)の推定プロテオームセットと、それらに加えて16植物種のUniGene (NCBI)を用いて、隠れマルコフモデルを用いたプロファイル検索と相同性検索により同定した。同定したトランスポーター遺伝子について総当たりの相同性検索を行い、同祖遺伝子の推定を行うとともに、系統プロファイリングを行い、それぞれの植物種のトランスポーター遺伝子群のゲノム中の構成を特徴づけた。また、各植物種の推定アミノ酸配列について、膜貫通領域を予測するTMHMMおよびSOSUIを用いて、その膜貫通の回数と領域を予測した。植物ゲノム情報から推定されたトランスポーター遺伝子の情報は、膜貫通領域の予測結果、タンパク質ドメイン検索の結果とともに、データベースとして統合された。