抄録
細胞の構造解析は,分子機能と目に見える表現形質を橋渡す重要なアプローチである.近年,生体分子や細胞内構造の可視化などイメージング技術の開発や,画像データベースの構築が進んでいる.一方,得られた画像の解析は,観察と人手を要する計測に頼っているのが現状である.そこで私たちは客観的で効率的な画像解析法の開発を進めている.その端緒として植物細胞をターゲットとして,多くの顕微鏡画像から個々の細胞の構造を評価し,細胞集団中での分布を明らかにする方法を検討した.解析対象には,細胞骨格やオルガネラを可視化したタバコBY-2細胞の共焦点像を主に用いた.そして塩基配列や遺伝子発現の解析における重要な統計手法であるクラスタリングに着目し,画像解析への応用を試みた.しかしクラスタリングに必要なサンプル間の距離について,顕微鏡画像にはゲノム情報等と異なり適切な距離尺度(画像間の差異の定量法)が存在しないという問題があった.そこで観察条件やアノテーション情報などのメタデータを用いて適応的に画像間距離を算出する方法を探った.その結果,多様な可視化対象と撮像法について,画像解析システムを逐一開発せずに対応できるクラスタリングアルゴリズムを考案した.細胞周期の進行にともなう細胞内構造の推移など,定量が困難な形態変化について本法で解析を行なった結果とあわせて報告する.