抄録
塩生植物のオヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)の耐塩性遺伝子を同定するためにマイクロアレイを用いて塩応答遺伝子の発現プロファイリングを行い、いくつかの塩応答性遺伝子の過剰発現ベクターを構築した。これらを導入したアグロバクテリウムの耐塩性検定を実施したところ、350mMのNaClを含む培地で耐性を示すクローンが2種得られた。1種はシロイヌナズナのZinc Finger型転写因子であるSTO遺伝子と相同性が高かった。STOは酵母や過剰発現させたシロイヌナズナで耐塩性を向上させることが報告されている。STO遺伝子は塩応答的な発現が報告されていないことから、塩性植物であるオヒルギで塩応答的にSTOホモログが発現することが高度な耐塩性と関係している可能性が示唆される。もう1種の遺伝子は、ankyrin遺伝子であり、これまでに耐塩性との関連の報告が無いことから新規な耐塩性機構に関連している可能性がある。これらの遺伝子については組換え植物を作出中である。また、耐塩性に関係する液胞型Na+/H+アンチポーター遺伝子のホモログは、塩処理したオヒルギでは発現の増強が見られていない。従って、転写量を指標にしたスクリーニングでは全ての耐塩性遺伝子の同定はできないと考えられる。そこで、オヒルギcDNAを網羅的に過剰発現させたアグロバクテリウムや組換え植物の耐塩性スクリーニングも試みている。