日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナの新規アンキリンリピートタンパク質STM1はABAシグナル経路を介した活性酸素の量的制御に関与する
*坂本 光松田 修射場 厚
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p. 0357

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抄録
我々はシロイヌナズナの耐塩性変異体stm1を単離し、その原因遺伝子がアンキリンリピートタンパク質をコードすることを明らかにした(第47回植物生理学会年会)。本研究では、STM1遺伝子の欠損による耐塩性獲得の分子的背景を解明することを目的とした。この変異体では、活性酸素の生成酵素であるNADPH oxidaseの遺伝子群(RBOH)の塩ストレスによる発現誘導が野生株よりも低下しており、それに伴い、活性酸素の蓄積が抑えられていた。活性酸素はストレス応答のセカンドメッセンジャーとして機能する一方、その過剰な蓄積はネクロシスを伴う細胞障害の原因となる。この変異体では、ABAによるRBOHの発現誘導も抑制されていた。これらの結果から、STM1は塩ストレス下において、ABAシグナルリングを介した活性酸素生成の促進に関与することが示唆された。ABA誘導性マーカー遺伝子(RD22, RD29A)の発現を解析した結果、stm1変異体では、ABAによるRD22の発現誘導は正常であったが、RD29Aの発現誘導が損なわれていることが明らかになった。RD22とは異なり、RD29Aの発現のABA誘導性はABRE経路を介したABAシグナリングに依存している。以上の結果から、STM1は、塩ストレス下においてABRE経路を介して活性酸素の生成を促進させる制御因子として機能する可能性が示唆された。stm1変異体においては、塩ストレスに応じた過剰な活性酸素の蓄積が回避されることによって、細胞障害が緩和されている可能性がある。
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© 2008 日本植物生理学会
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