抄録
我々は最近、シロイヌナズナにおいて脂質のリノレン酸量(LAC)が活性酸素レベルと花成との両方に負の相関を持つことを見出した。ここでは、この相関が北方林針葉樹でも成り立つことを報告する。LACが樹木の花成の決定と負の相関があるのかを調べるために、北海道立林業試験場に生育するグイマツ、カラマツ、アカエゾマツ、トドマツの針葉を毎月採取した。グイマツとカラマツの6月のLACは球果量と負の相関があった一方で、7月のLACは正の相関を示した。トドマツはグイマツやカラマツよりもLACが高かったが、5月、6月、7月のLACは負の相関を示した。アカエゾマツはグイマツとカラマツよりも常に低いLACであったが、球果量と正の相関が認められた。こうした結果とリノレン酸の派生物のひとつが花成を誘導するという事実をもとに、花成制御におけるリノレン酸の役割を議論する。