抄録
高等植物のアスコルビン酸(AsA)生合成のD-マンノース/L-ガラクトース系に関わるほとんどの酵素の分子特性が解析されてきたが、その系の制御機構については未だ不明のままである。ホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)は、AsA生合成の第一段階であるフルクトース-6-Pからマンノース-6-P(M6P)への反応を可逆的に触媒する。従って、PMIは解糖系などの炭素代謝からAsA生合成への炭素分配量を決定する重要な鍵酵素であると思われる。本研究ではシロイヌナズナPMIの生理機能について解析した。シロイヌナズナゲノム中には2つの PMI遺伝子(PMI-1、2)が存在し、PMI-1の転写レベルは光条件下、PMI-2は暗黒下で顕著に誘導されていた。次に、PMIの酵素学的性質について解析するため、大腸菌でのリコンビナントタンパク質の発現系を構築し、精製酵素を得た。PMI-2のM6Pに対するkm値は328 μM、Vmax値は21.3 μmol/min/mg proteinであった。また、他の生物由来のPMIと同様に、PMI-2はZn2+、Cd2+、EDTA、種々の還元剤によって阻害された。次に、PMI-2遺伝子破壊シロイヌナズナを用いて、AsAレベルを野生株と比較した。その結果、光照射下および暗黒下ともにPMI-2の欠損はAsAレベルに影響しなかった。このことから、PMI-2はAsA生合成に関与していないことが明らかとなった。現在、PMI-1の酵素学的性質について解析するとともに、PMI-1遺伝子破壊株の単離を試みている。