抄録
動物細胞のプロテインチロシンフォスファターゼ(PTPase)は活性中心に存在するシステイン残基の酸化修飾により容易に失活するが、植物のPTPaseも同様の制御を受けると考えられている。しかし我々は、シロイヌナズナのPTPase(AtPTP1)活性が活性中心以外のシステイン残基でレドックス制御されることを見出した。野生型AtPTP1は濃度依存的に酸化型グルタチオン(GSSG)およびH2O2で失活した。175番目のシステイン残基をセリン残基に置換した変異酵素(C175S)はGSSGまたはH2O2に対する抵抗性が大幅に増した。これらのことからAtPTP1は活性中心にあるC265よりもC 175の酸化還元状態で活性が調節されると考えられた。C175S変異酵素を導入した植物の方が、野生型酵素を導入した植物に比べて表現型が強いことを考え合わせると、植物体内でもC 175はレドックス制御を受けると考えられる。