抄録
植物において、3量体Gタンパク質αサブユニット(Gα)は、細胞分裂、病気抵抗性、植物ホルモン応答などに関与する事が知られている。本研究において我々は、6種類の植物ホルモン応答における、イネGα(RGA1)の機能解析を行った。その結果、RGA1欠失変異体d1は、ブラシノステロイド(BR)応答が弱化していることを明らかにした。また、d1変異体は、矮性、直立葉、短粒、第二節間の伸長阻害、暗所下における光形態形成など、BR関連変異体に共通の表現型を示した。
BRは、受容体キナーゼBRI1により受容され、BZR1等の細胞内因子へとその情報が伝達された結果、BR関連遺伝子群の転写フィードバック制御を引き起こすとされる。BRI1変異体(d61)においては、この応答が観察されない。これと対照的に、d1においては、BR生合成遺伝子等のフィードバック制御が確認された。また、一般にBR変異体は、内性BR量の変動を伴うが、d1の内性BR量は正常であった。これらのことは、d1において、BRI1を開始とする経路は正常であることを示唆している。さらに、d61とd1の2重変異体は、相加的な細胞数の減少が観察され、より顕著な矮性形質を示した。
以上より、RGA1は複数のBR形質の付与に関与すること、d1において、BRI1からBZR1に至る経路は正常に機能する可能性が示唆された。