抄録
フィトクロムによる光形態形成(幼葉鞘の光成長阻害反応)が抑えられたイネcpm1突然変異体(Biswas et al. 2003)の原因遺伝子は、ジャスモン酸(JA)の生合成に働くアレンオキシド合成酵素(AOS)の遺伝子(OsAOS1)であることを第47回年会で報告した。cpm1変異体では、点突然変異により1アミノ酸が置換したOsAOS1タンパクが発現していることが予測された。今回、組換えタンパクを用いて、正常な配列のOsAOS1はAOS活性を示すが、点突然変異をもつ組換えタンパクはAOS活性をほとんど示さないことを確認した。また、内生JA量をLC-MS/MSを用いて測定することによって、野生型品種(ニホンマサリ)の幼葉鞘では傷害処理および赤色光照射に応答してJA含量が上昇するが、突然変異体ではこの反応が大幅に抑えられていることを明らかにした。これらの結果は、JAに依存して発現が調節される遺伝子が傷害応答と光形態形成の両方に関与している可能性を示しており、この点を明らかにする目的で、イネの44Kマイクロアレイを用いた解析を行った。その結果、少なくとも5000個の遺伝子が傷害に、6000個の遺伝子が赤色光に反応し、約2000個が両反応に共通する遺伝子であることが分かった。cpm1変異体を用いることによって、共通する遺伝子の多くはJAに依存するものであることも明らかになった。