抄録
SCAMP2(Secretory Carrier Membrane Protein 2)は、4回膜貫通領域と細胞内輸送に関わる様々な配列を持つ膜タンパク質で、動物細胞において分泌に関与していると言われている。我々は、SCAMP2をマーカーとして植物細胞における分泌機構の解析を行った。タバコ培養細胞BY-2株において、蛍光イメージングおよび高圧凍結技法による電顕解析の結果、SCAMP2はトランスゴルジネットワーク(TGN)、細胞膜および小胞のクラスター構造体に局在することがわかった。そして、このクラスターは、ゴルジ体から離れて存在し、細胞膜および細胞分裂時の細胞板と融合することから、ゴルジ以降の分泌に関わるクラスターであることが示唆され、我々はSVC (Secretory vesicle cluster)と命名した。さらに、SVCはタバコやシロイヌナズナの個体、イネ培養細胞内でも観られることから、高等植物で広く機能していることが示唆された。現在、植物個体におけるSVCを介した分泌機構を明らかにするために、植物個体の微細構造観察により、組織におけるSVCの分布を調べている。また、SCAMP2-YFPを発現させたシロイヌナズナ形質転換体を作製するとともに、蛍光免疫染色および免疫電顕等により、SCAMP2と小胞輸送制御分子との関係を調べており、それらの結果についても合わせて報告する予定である。