抄録
小胞輸送は,オーキシンの極性輸送,重力屈性,細胞分裂などの植物の生命機能において重要な役割を果たしている.小胞輸送の制御に関わるRabファミリーは,真核生物に広く保存されている低分子量GTPaseで,輸送小胞の標的膜への繋留・融合を制御していることが知られている.シロイヌナズナのゲノム中には,57個のRab GTPaseがコードされており,さまざまな輸送ステップで機能している.なかでも Rab5グループは,エンドソーム/液胞前区画に局在し,他の生物のRab5と高い相同性を示すRHA1,ARA7と植物に特異的なARA6の3つのメンバーから構成されている.Rab5メンバーが植物個体レベルで持つ生理的意義を明らかにするために,変異体を用いて,各遺伝子の個体における機能の解析を行った。変異体の表現型解析から,rha1, ara7, ara6の単独の変異体は野生型と同様に生育するが, rha1 ara7二重変異体は単離できなかった.このことから,RHA1とARA7は重複した機能を持つと考えられる.さらに,野生型とのクロスポリネーション解析により,この変異体は雄性配偶体致死となることが明らかになった.そこで,rha1とara7の変異が,花粉の形成や花粉管の発芽・伸長等のいずれの過程に損傷を引き起こすのかを調べるため,変異体より花粉を採取し,その構造や機能について解析を行ったのでその結果を報告する.