抄録
トランスゴルジネットワーク(TGN)は,小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質が,液胞,細胞膜等の目的地別に選別・輸送される際の分岐点となる重要なオルガネラである。しかし,高等植物におけるTGNの定義は曖昧であり,動物・酵母においてTGNに局在するSNARE分子のオーソログ,SYP41が局在するオルガネラを便宜的にTGNと呼んでいるものの,その構造・機能は全く明らかにされていない。シロイヌナズナには,SYP41に相同性の高いホモログとしてSYP42及びSYP43が存在している(SYP4グループ)。我々は,高等植物におけるTGNの機能を明らかにするため,SYP4グループについて変異体の解析を行った。その結果,それぞれの単独変異体(syp41,syp42,syp43)及び二重変異体(syp41 syp42,syp41 syp43)では目立った表現型は観察されなかったが,syp42 syp43二重変異体では根の伸長が著しく阻害されていた。このことから,SYP4グループではSYP43が主要に機能しており,TGNが根の伸長において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。次に,TGNの動態を明らかにするために,TGNを可視化した形質転換体を作成し,観察を行った。その結果,TGNは主にゴルジ体のトランス側に存在するが,一部はゴルジ体とは独立したオルガネラであることが示唆された。