抄録
植物には多数の受容体様キナーゼ遺伝子が存在しているが,特異的なリガンドが同定されているものは極めて少数である.数多く残されているリガンド未知受容体に対するリガンドの探索は,ポストゲノム研究において細胞間情報伝達を知る上で重要であると考えられる.我々はPSKおよびPSK受容体をリガンドー受容体ペアのモデルとして,リガンド結合活性を維持したまま受容体キナーゼをビーズ上に固定化する手法を確立した.蛍光標識リガンドを用いた場合,受容体固定化ビーズの表面で起こるリガンドー受容体相互作用を,共焦点レーザー顕微鏡による解析により可視化することが可能であった.また受容体固定化ビーズを用いて受容体をベースとしたアフィニティーカラムを作製し,植物培養細胞の培養上清に含まれるリガンドを直接,高純度に精製するリガンドフィッシングにも成功した.この新たな受容体固定化の手法およびリガンドフィッシングの技術は,従来行われてきた遺伝学的手法やバイオアッセイによる生化学的な低分子リガンドの探索に代わる,新奇リガンドー受容体ペアの直接的な同定に有力な手法になり得る.現在リガンド未知受容体キナーゼ群に対するリガンドの同定への応用を進めている.