抄録
近年,シロイヌナズナゲノム解析の進展に伴い,機能未知ながら多数の受容体様キナーゼおよび分泌型低分子ペプチドをコードする遺伝子群が見出され,それらの機能およびリガンド−受容体ペアの同定に大きな注目が集まっている.分泌型低分子ペプチドは,通常N末端に分泌型シグナルを持つ100アミノ酸前後の前駆体ペプチドとして翻訳されるが,チロシン硫酸化やヒドロキシプロリン化などの翻訳後修飾を受けた後に,プロセシングにより短鎖に切断され,成熟体として細胞外へと分泌されるタイプと,複数のシステイン残基(6~8残基)を介して分子内ジスルフィド結合を形成後そのまま分泌されるタイプに分けられる.いずれの場合も翻訳後の成熟化のステップが機能発現に重要であることから,構造や分子量に依存することなく,生化学的に成熟体を同定し機能解析を行なう網羅的手法の確立が求められている.我々は,分泌型ペプチドのプールと考えられる植物細胞培養液を材料として,生物検定に依存しないペプチドリガンド候補の網羅的な解析・同定を目指し,実験系の確立を行なってきた.培養系では,細胞は条件により様々なペプチド群を分泌していると考えられ,多くの培養系の培地を探索源とすることで,多くのペプチドを同定できると期待できる.種々の細胞培養液に含まれる分泌型ペプチドの解析結果を報告する.