抄録
シロイヌナズナやイネ等の植物の遺伝子において、他の動物等に比較し、転写因子(TF)の占める割合が非常に高いことが知られている。このことは、植物において転写を介した制御が重要な役割を担っていることを示唆している。そこで、約2000あると想定されるシロイヌナズナのTFの総合的な機能解析を目指して、予測される全てのTFをGatewayベクターへの導入を行っている。これまでに、約1000種類のTFを収集した。これらのTFは、終止コドンが欠落しておりLR反応を用いた種々の融合を可能にしている。
我々は、これらをグルココルチコイド受容体と結合させた機能誘導型のTF発現系統を作出している。本変異系統は、ステロイドホルモンであるDEX処理により導入された転写因子の機能が誘導される仕掛けになっている。各TFにつきそれぞれ独立に16系統以上の形質転換植物を作成し、現在までに、620系統(合計620遺伝子、計10,000形質転換体)の作成を終了しており、これらを用いて機能誘導後の変異形質を調べている。表現型観察は、10日および17日の芽生えを用いて観察を行い、胚軸長、子葉、本葉の形態、根の形状等に関わる優性変異形質を確認している。
本発表では作出中の変異系統についての現状と、機能解析の例を示し、本変異系統の有用性を議論する。