抄録
キチンは糸状菌の分子パターン(MAMPs)であり、その認識機構は植物の基礎的病害抵抗性を理解する上で極めて重要である。最近、我々はイネからキチンエリシターの受容に関わるレセプター(CEBiP)を単離した1)。しかしCEBiPには細胞内ドメインが存在せず、単独ではシグナルを伝達することが出来ないと考えられた。また、架橋剤等で処理した膜画分を可溶化し、電気泳動、抗CEBiP抗体によるWestern blottingを行ったところ、CEBiPより高分子量側にバンドが検出されたことから、CEBiPが受容体複合体を形成していることが示唆された。一方、我々は最近、シロイヌナズナ突然変異体の解析からキチンエリシターシグナル伝達に不可欠な受容体キナーゼCERK1を同定した2)。そこでイネデータベースからCERK1と高い相同性を持つ Os LysM-RLK9を得、この分子がCEBiPと複合体を形成する可能性を検討した。酵母Two-Hybrid法で、これらの分子の細胞外領域をBaitあるいはPreyとして用いた実験から、これらが直接相互作用することが示された。この結果は OsLysM-RLK9がCEBiPと細胞表面で複合体を形成している可能性を示している。1)Kaku et al., PNAS, 103, 11086 (’06), 2)Miya et al., PNAS, in press.