抄録
ヒストンN末端の化学修飾に依存したクロマチン構造の変化は遺伝子の転写制御に関与している. 植物においても, 発生や形態形成などにかかわる遺伝子領域の転写制御にヒストン修飾の変化をともなう事が報告されている. しかしながら, 環境ストレス変化に応答する遺伝子領域において, 遺伝子発現とその領域におけるクロマチン構造変化に関する報告はほとんどない.
我々は, シロイヌナズナを用いてストレス応答時における遺伝子発現制御とヒストン修飾との関連について解析を行っている. 乾燥ストレス誘導性遺伝子であるDREB2A, RD20, RD29A, RD29B およびRAP2.4のプロモーターおよびコーディング領域上における, いくつかのヒストンメチル化およびアセチル化について, 経時的(無処理、乾燥処理2時間および5時間)な修飾状態の変動の検出を行った. その結果、これら全ての遺伝子のコーディング領域で, 乾燥処理にともなうヒストンH3 K4me3の増加が確認された. 本発表では, ヒストンH3の修飾変化を中心に, ストレス誘導性遺伝子の発現制御とその領域におけるクロマチン状態の変化について議論したい.