抄録
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803において、光化学系I(系I)遺伝子群の転写は弱光下で活性化され、強光下で抑制される。系I遺伝子はゲノム上に分散して存在するにも関わらず、その応答は統一的かつ鋭敏である。これまでに我々は系I遺伝子群のプロモーター解析を行い、いずれの遺伝子においてもコア領域の直上流に位置するATリッチ配列が、弱光下での正の調節に関与していること、強光下で一過的に不活化されることにより、強光応答が達成されることを明らかにした。この強光応答領域には、OmpR型レスポンスレギュレーターRpaB (Rre26、Ycf27)の認識配列が正向きまたは逆向きに存在している。そこで、RpaBをHis-tag融合タンパク質として発現・精製し、ゲルシフト解析を行ったところ、His-RpaBが系I遺伝子プロモーターに特異的に結合することが示された。rpaBのコピー数を減らすと、系Iプロモーター活性が大きく減少することから、RpaBは弱光下で系Iプロモーターに結合し、正の調節を行っていると考えられる。さらに他細菌のUPエレメントとの相同性から、強光応答領域に、RNAポリメラーゼのαサブユニットC末端領域が相互作用する可能性も考えられるため、現在αサブユニットにアミノ酸置換を導入し、系I遺伝子発現への影響を調べている。