日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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塩ストレス下における Synechococcus elongatus PCC 7942 株の炭水化物代謝
*鈴木 英治佐藤 倫子中村 保典
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p. 0480

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抄録
ある種のシアノバクテリアは、塩ストレス時に適合溶質としてショ糖を細胞内に蓄積する。Synechococcus elongatus PCC 6301/PCC 7942 や Thermosynechococcus elongatus BP-1 においては、ショ糖リン酸合成酵素(SPS)とショ糖 6-脱リン酸化酵素(SPP)遺伝子が融合しており、単一のタンパク質として機能すると考えられる。これに対し Synechocystis PCC 6803 や海産性 Synechococcus/Prochlorococcus の数種では、アミノ酸置換により SPP 領域内の活性に必要な残基が欠落している。
S. elongatus PCC 7942 株の液体培養に各種化合物を加え、ショ糖合成誘導に対する効果を調べた。通常の培養条件では細胞内へのショ糖蓄積はほとんど認められないが、0.2 M NaCl 添加 24 時間後の細胞内ショ糖濃度は、約 160 mM に達した。NaCl と比較して、NaNO3 は同等の誘導効果を示し、KCl、KNO3 の順で効果は低下した。一方 0.2 M ソルビトール存在下、ショ糖合成はほとんど認められなかった。
S. elongatus PCC 7942 株の SPS-SPP 構造遺伝子内に、カナマイシン耐性遺伝子を挿入した遺伝子欠損株では、塩ストレス条件下でもショ糖は全く検出されなかった。0.3 M NaCl 添加条件で、野生株の生育は非添加条件に比べわずかに遅れる程度であったが、SPS-SPP 欠損株の生育は著しく阻害された。貯蔵多糖グリコーゲンの消長と併せ、塩ストレス下での炭水化物代謝について考察する。
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© 2008 日本植物生理学会
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