抄録
シアノバクテリアはオルガネラを持たないため、糖の同化・異化反応が細胞質内で共存している。これらの代謝反応が、異なる栄養条件下でどのように制御されているのかを知るため、光独立栄養条件下またはグルコースを添加した光混合栄養条件下におけるSynechocystis sp. PCC 6803の細胞内代謝産物量を、Capillary electrophoresis mass spectrometry (CE/MS)により検出した。光混合栄養条件下の野性株では、酸化的ペントースリン酸回路および解糖系の活性化、カルビン回路の抑制が示唆されたが、光混合栄養条件下で致死となるpmgA破壊株では、CO2固定活性の抑制が不十分であると考えられた。この変異株では、光混合栄養条件下での増殖遅延に先立ち、1) ATP、NADPH量が低下する、2) 酸化的ペントースリン酸回路、呼吸鎖の活性化が十分に行われない、3) イソクエン酸が異常蓄積する、等の表現型も観察されたことから、栄養条件の変化に伴い、PmgAが糖の同化・異化反応の調節に重要な役割を果たしていると思われる。