抄録
我々は遺伝子発現プロファイルの比較により花粉と花粉管に発現する45個のレセプター様キナーゼ遺伝子(RLK)を同定した。機能解析の為にT-DNA挿入遺伝子破壊株を入手し表現形を調べたが、1遺伝子破壊株ではin vivoで顕著な表現形が認められなかったため、18遺伝子について姉妹遺伝子間で2重遺伝子破壊株を作成し解析を進めた。1組のRLK破壊株において、植物体の形や大きさは正常であるにも関わらず、ほとんど種子をつけない植物体を見いだした。相互交雑により機能欠損は雄側にあることを確認した。培地上で、花粉は発芽を始めるものの花粉管の先端が破裂し伸長が阻害される事が分った。また、雌蕊内では、花粉管伸長はパピラ細胞から花柱にかけて止まり、ほとんどが心皮内部まで達せず受精を完了できない事が示された。RLK-YFP融合タンパク質を形質転換すると、偏った分離比や種子の減少、花粉管伸長阻害の表現形が相補されることから、姉妹遺伝子である2つのRLKがその原因遺伝子であると特定した。RLKによって制御される花粉管伸長が受精において果たす役割について考察する。