日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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細胞内に亜ヒ酸を取り込む輸送体の探索と解析
*神谷 岳洋田中 真幸前島 正義藤原 徹
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p. 0509

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抄録
生物にとってヒ素は毒である。環境中ではヒ酸と亜ヒ酸(As(III))の2つの形態が主に存在する。ヒ素は必須元素ではないが、植物体内へ輸送体を介して取り込まれることが知られている。ヒ酸はリン酸輸送体により取り込まれることが示されているが、As(III)の輸送経路は分かっていない。そこで本研究では、シロイヌナズナのEMS処理種子を用いたスクリーニングにより、As(III)を細胞内に取り込む輸送体を同定することを目的とした。
As(III)輸送体の機能欠損株はAs(III)耐性になることが予想される。そこで、EMS処理M2種子21000粒を15 μM As(III)を含む培地に播種し、根の長さを指標にスクリーニングを行った。その結果、顕著な耐性を示す株を3株得ることができた。スクリーニングと平行して、他の生物でAs(III)を輸送することが示されているアクアグリセロポリンの植物ホモログNIPの遺伝子破壊株についてAs(III)耐性を検討した。その結果、nip1;1破壊株のみがAs(III)耐性を示した。そこで、スクリーニングで得られた耐性株のNIP1;1のゲノム配列を読んだところ、3株ともNIP1;1に塩基置換が見つかった。以上のことから、シロイヌナズナで植物体内へのAs(III)の取り込みに関与している輸送体はNIP1;1であると推測される。
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© 2008 日本植物生理学会
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