抄録
ケイ素はケイ酸の形態で植物に吸収され、様々なストレスを軽減できる有用元素である。これまでに我々はケイ素集積植物であるイネからケイ酸トランスポーター遺伝子Lsi1、Lsi2、Lsi6を単離してきた。今回は同じイネ科のトウモロコシからそれらの相同遺伝子の単離と機能解析を行った。トウモロコシのケイ酸吸収のkineticsはイネと同様飽和型の吸収パターンを示し、導管液のケイ酸濃度は外液より数倍高かった。イネLsi1、Lsi6、Lsi2の相同遺伝子ZmLsi1、ZmLsi6、ZmLsi2をそれぞれクローニングしたところ、いずれもアミノ酸レベルで80%以上の高い相同性があった。アフリカツメガエルの卵母細胞を用いてケイ酸輸送活性の測定を行なったところZmLsi1とZmLsi6はケイ酸の内向きの輸送活性を示した。これに対して、ZmLsi2は外向きのケイ酸輸送活性を示した。部位別の発現量を調べると、ZmLsi1とZmLsi2は主に種子根で、ZmLsi6は主に地上部で発現していた。抗体染色で局在性を調べたところZmLsi1は根の表皮細胞にZmLsi2は内皮細胞に、ZmLsi6は葉鞘と葉身の導管周辺の細胞で発現していた。これらの結果はZmLsi1とZmLsi2が根からのケイ酸吸収に、ZmLsi6は地上部のケイ酸の分配に関与していることを示している。