日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物ホルモンによるシロイヌナズナの根でのクロロフィル合成制御機構の解明
*小林 康一馬場 信輔Keranen MikkaAro Eva-Mari太田 啓之増田 建
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p. 0516

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抄録
光合成に必須の色素であるクロロフィルやその前駆体は、光増感酸化作用を持っているため、転写、翻訳、酵素活性の調節といったさまざまな段階で厳密な合成制御を受けている。これまでの研究から、クロロフィル合成に関わる遺伝子は、光や生育条件に応じてその発現が協調的に制御されていることが明らかになっているが、分子レベルでの発現制御メカニズムはまだ良く分かっていない。そこで我々は、クロロフィル合成遺伝子群の協調的な発現制御メカニズムを明らかにするために、根でのクロロフィル合成に注目して研究を行った。通常、根ではほとんどクロロフィル合成は起こらないが、サイトカイニンを処理した根ではその合成が活性化することが分かった。また、サイトカイニンレセプターの変異体では根の緑化が抑制されたことから、サイトカイニンシグナルは根におけるクロロフィル合成に重要であることが分かった。それに対し、オーキシンシグナルを阻害した根でも緑化の促進が見られたことから、オーキシンシグナルは根の緑化に対して抑制的に働くと考えられた。遺伝子アレイ解析の結果、これらのシグナルはクロロフィル合成遺伝子や光合成遺伝子の協調的な発現誘導を行っていることが示された。さらに、hy5変異体では、これらの条件下においても根の緑化がまったく見られなかったことから、これらのシグナルはHY5を介してクロロフィル合成を活性化していると考えられる。
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© 2008 日本植物生理学会
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