抄録
光化学系I複合体(PSI)は、複数のカラムクロマトグラフィーなどを用いた煩雑な方法によって精製されているが、今回我々は、Hisタグを付加したサブユニットを発現するSynechocystis sp. PCC6803を用いた簡便なPSIの精製方法を確立したので報告する。
PSIを構成するサブユニットであるPsaFのC末端、PsaJのN末端にHisタグを付加した株(F-His, J-His)を作製した。これらの株は光独立栄養条件下で野生株と同様の速度で増殖した。光合成活性においても両者間には差が見られなかった。それぞれの株から単離したチラコイド膜をドデシルマルトシドで可溶化したのち、Ni2+アフィニティークロマトグラフィーを用いることにより、PSIを精製した。さらに、得られたPSIについてグリセロール密度勾配遠心を行ったところ、約1:3の割合で、モノマーとトリマーが得られた。Blue-Native PAGEにおいて、トリマーは1つのバンドとして検出されたが、モノマーは、近接する2つのバンド(モノマー1、モノマー2)として検出された。SDS-PAGEにより構成サブユニットを詳しく解析したところ、モノマー1はトリマーとモノマー2と比較してPSIの一部のサブユニットが欠落していた。これらの結果は、PSIのモノマーには二つの異なるアセンブリー状態があることを示唆している。