抄録
高等植物や緑藻の光化学系I(PSI)は15のサブユニットとコファクターからなる約700kDaの複合体である。高等植物では全サブユニットが結合したPSI標品が単離され、そこにはアンテナ複合体(LHCI)が4-6種存在する。一方、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)から精製されたPSI標品にはPsaN/O/Pは失われているが、9種のLHCIが存在する。クラミドモナスには psaN, O遺伝子は存在し、psaPのホモログも見出された。本研究ではクラミドモナスのPsaN/O/P抗体をそれぞれ作製し、PSI複合体内での存在部位の解析に用いた。チラコイド膜をドデシルマルトシドで可溶化しショ糖密度勾配超遠心法で分離すると、PsaN/O/Pは結合が弱くPSI複合体から遊離した。またPsaN/OはPSI欠損株で蓄積量が大幅に減少した。さらにチラコイドタンパクを化学架橋するとPsaF/NとPsaL/Oが架橋した。以上の結果から、PsaNとPsaOはチラコイド膜上ではPSI複合体と結合していると結論した。また、ステート2状態のチラコイド膜から単離されるPSI-LHCI/II超分子複合体にPsaNが結合していることが分かった。PsaNのPSI複合体への結合はステート2状態では安定化されると考えられる。PsaPの存在部位に関しては今のところ不明で、今後の課題である。