日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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好熱・好酸性原始紅藻 Cyanidioschyzon merolae の光化学系I複合体の特徴
*田中 克幸高橋 武志澤 加奈井上 名津子小澤 真一郎小池 裕幸高橋 裕一郎菓子野 康浩佐藤 和彦
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p. 0549

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抄録
好熱・好酸性原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeは単細胞の真核生物で、初期の真核光合成生物の特徴をよく保存していると考えられている。また、全ゲノム配列がMatsuzakiらにより既に解読され、報告されている。光化学系I(系I)の遺伝子に注目してみると、cab psaOといった真核生物の系I特有の遺伝子が存在する一方、psaMといった、これまでラン色細菌の系Iにのみ見られた遺伝子も存在する。このように、系Iの遺伝子構成上は、真核生物型とラン色細菌型の両方の性質を併せ持ったキメラ的な特徴を持つことが示唆される。
C. merolaeの系I複合体の特徴を明らかにするため、系I複合体を高度に精製し、生化学的分析を行った。その結果、遺伝子上で発見されているすべての系Iの遺伝子が発現し、系I複合体に保持されていることが確認された。ラン色細菌にはないが、C. merolae のゲノム上には3種類の光捕集色素タンパク質LHCの遺伝子が見出される。これらの3種類のタンパク質がいずれも結合していることも確認された。この精製した光化学系I複合体は単量体であった。電子受容体A1はラン色細菌や高等植物の光化学系I複合体で見られるフィロキノンではない可能性が高い。このように、実際に精製した系I複合体は真核生物とラン色細菌の両方の性質を併せ持ったキメラ的な特徴を持っていた。
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© 2008 日本植物生理学会
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